外壁塗装は主に、ローラーを使った手塗り塗装と専用機械による吹き付け塗装の2種類があります。
結論から言うと、現代の建物ではローラー塗装が主流になっています。
しかし、どちらの工法にも一長一短があり、「これを選べば間違いなし」という万能な答えはありません。重要なのは、それぞれの特性を理解し、あなたの建物に合った工法を適切に選ぶこと。そして何よりも、施工手順をしっかり守り、信頼できる業者に依頼することです。
この記事では、ローラー塗装と吹き付け塗装のメリット・デメリットを徹底比較し、現代の塗装事情とそれぞれの工法が選ばれる理由を深く掘り下げて解説します。
1. 賃貸住宅の外壁塗装は吹き付けが多い?
外壁塗装の工法には、主に「ローラー塗装」と「吹き付け塗装」があります。
現代において、外壁塗装ではローラー塗装が主流です。
これは、塗料や施工技術の進化に加え、近隣環境への配慮、そして後述する外壁材の主流がモルタルからサイディングへ変化したことが大きく影響しています。
1-1主な外壁塗装の工法
【ローラー塗装】 塗料を吸い込ませたローラーを壁面に転がして塗布する工法
メリット
- 塗料の飛散が極めて少ない:住宅密集地での作業でも、隣家や車、植栽への塗料の飛び散りを最小限に抑えられます。
- 騒音が少ない:吹き付け機のような大きな作動音が出ないため、作業中の近隣への騒音トラブルが少なくなります。
- 塗料のロスが少ない:塗料を効率的に使用するため、無駄が少なく、塗料コストを抑えやすい傾向があります。
- 塗膜の厚みを確保しやすい:ローラーでしっかりと塗り込むことで、均一で十分な厚みの塗膜を形成しやすく、塗料本来の性能を引き出しやすいです。
デメリット
- 工期が長くなりがち:広範囲を手作業で塗るため、吹き付け塗装に比べて時間がかかります。
- 職人の技術に左右される:均一な仕上がりには、塗料の含ませ方や塗る速度など、職人の熟練した技術が必要です。
【吹き付け塗装】 吹き付け機械(専用のガン、エアレススプレーなど)を使用して霧状になった塗料を吹き付けて塗布する工法
メリット
- 作業効率が非常に高い:広範囲を短時間で均一に塗装できるため、大規模な建築物の塗装に適しています。
- 塗膜の均一性が高い:塗料が霧状になって噴射されるため、ムラなく均一な塗膜を形成しやすいです。
- 模様付けが可能:塗料の粘度や吹き付け圧、ガンの種類によって、多彩な模様(リシン、スタッコ、タイル調など)を表現できます。
- 凹凸面にも対応:複雑な形状や細かな凹凸にも塗料が入り込みやすく、手作業では難しい場所も均一に仕上げられます。
デメリット
- 塗料の飛散が多い:霧状になった塗料が広範囲に飛散するため、周辺への養生を厳重に行う必要があります。
- 塗料のロスが多い:飛散によって塗料のロスが生じやすく、ローラーや刷毛に比べて使用する塗料の量が増える傾向があります。
- 専門的な技術が必要:均一な仕上がりを得るためには、吹き付け圧の調整やガンの動かし方など、高度な技術と経験が必要です。
- 初期投資が高い:ガン本体だけでなく、コンプレッサーなど専門的な機材が必要になるため、初期投資が高くなります。
1-2. なぜ「吹き付け塗装」が減少したのか?
かつて主流だった吹き付け塗装が減少傾向にあるのは、下記の理由からです。
- 外壁材の主流の変化(モルタルからサイディングへ)
- かつて外壁材はモルタルが主流でした。モルタル外壁は、現場で塗って仕上げるため、表面にざらつきや微細な凹凸が多く、塗料が浸透しにくい特性がありました。このようなモルタル外壁には、塗料を霧状に噴射して均一に付着させ、独特の意匠性(リシン、スタッコなど)を出しやすい吹き付け塗装が非常に適していました。
- しかし、近年では、工場で成形・加工されたサイディングボード(窯業系、金属系など)が主流となっています。サイディングは、表面が比較的平滑で、あらかじめデザインや色が施されているものも多く、吹き付け塗装のような特定の意匠性を必要としない場合が増えました。
- サイディング外壁の塗り替えでは、ローラー塗装でも十分に塗料が密着し、均一な仕上がりを実現できます。この外壁材の変化が、吹き付け塗装の採用を減らす大きな要因となりました。
- 塗料の飛散問題:吹き付け塗装は、塗料を霧状にして噴射するため、どうしても広範囲に塗料が飛散してしまいます。住宅が密集している環境では、隣家の車や洗濯物、植栽、周辺の建物への付着リスクが高く、近隣トラブルの原因となりやすい点が大きなデメリットです。
- 騒音問題:塗料を噴射するためのコンプレッサーや吹き付け機の作動音が大きく、作業中の騒音トラブルにつながりやすいです。これも、近隣住民への配慮が強く求められる現代の住環境では敬遠される要因となります。
- 塗料のロスが多い:霧状になった塗料は、塗装面に到達する前に風で流されたり、空気中に拡散したりするため、実際に壁に付着する塗料の量がローラー塗装に比べて少なくなります。これにより、同じ面積を塗るために必要な塗料の量が増え、結果として塗料コストが高くなる傾向があります。
- 養生の手間と費用:飛散対策のため、窓やドア、地面、周辺のあらゆるものを厳重に養生する必要があります。この養生作業にかかる手間や費用は、ローラー塗装に比べて大きくなります。
1-3. 賃貸住宅の外壁は吹き付け塗装が多い?
なぜ賃貸住宅では、いまだに吹き付け塗装が「多い」と思われているのでしょうか?
最も大きな理由は、過去の主流工法と、現在も多数稼働する既存の賃貸物件の多さです。
サイディング普及以前、賃貸住宅もモルタル外壁が主流でした。このモルタル外壁には、意匠性や耐久性のため、吹き付け塗装が非常に多く用いられていました。
また、吹き付け塗装特有のザラザラとした質感は、ローラー塗装の平滑な仕上がりに比べ、視覚的に印象に残りやすいため、「賃貸住宅は吹き付けが多い」という認識につながっていると考えられます。
2. 吹き付け外壁の塗り替えはどうする?
現代では吹き付け塗装が稀になっているとはいえ、昔に建てられた建物の多くは、外壁にリシンやスタッコなどの吹き付け塗装が施されています。
これらの外壁を塗り替える際は、主に二つの選択肢があります。
ローラー塗装に切り替える
- メリット:塗料の飛散や騒音の心配が少なくなり、近隣への配慮が容易になります。また、サイディングのような滑らかなモダンな印象に外観を変えることができます。
- 注意点:既存の吹き付けの凹凸がなくなるため、建物の印象が大きく変わります。また、塗料が深く浸透している場合、下地処理をより丁寧に行う必要があります。業者によっては、凹凸を完全に消すために厚めに塗料を塗布する場合もあります。
再度、吹き付け塗装で塗り替える
- メリット:既存のリシンやスタッコといった意匠性の高い独特の質感をそのまま維持できます。 これが、その家の個性や風合いだと気に入っている方にとっては最適な選択肢です。元の外観を変えたくない場合に適しています。
- 注意点:前述の通り、塗料の飛散や騒音のリスク、塗料ロスの増加といったデメリットが伴います。特に住宅密集地では、これらの問題に対する厳重な対策が不可欠です。
3. ローラー塗装と吹き付け塗装の徹底比較
項目 |
ローラー塗装 |
吹き付け塗装 |
作業効率 |
やや時間がかかる(手作業のため) |
非常に速い(広範囲を一気に塗れる) |
塗料の飛散 |
非常に少ない |
多い(厳重な養生が必要) |
騒音 |
少ない |
大きい(コンプレッサーの作動音など) |
塗料のロス |
少ない(効率的に使用) |
多い(霧状になるため) |
人件費 |
工期が長い分、膨らむ可能性あり |
工期短縮により、大規模では抑えられる可能性あり |
塗料費 |
ロスが少ないため、比較的抑えられる |
ロスが多い分、多くかかる傾向 |
養生の手間 |
比較的少ない |
大変多く、厳重な養生が必須 |
仕上がり |
滑らかで均一、多彩模様も可能 |
独特の凹凸や質感(リシン、スタッコ、吹付タイルなど) |
技術 |
均一な塗膜には経験が必要 |
均一な仕上がりや模様付けには高度な専門技術が必要 |
初期コスト |
比較的抑えられる |
機材費や養生費で高くなることもある |
適性 |
住宅密集地、滑らかな仕上がりを重視、塗料ロスを抑えたい |
既存の意匠性維持、工期を最優先、独特の質感 |
4. まとめ
外壁材がモルタルからサイディングへ変化したことが、吹き付け塗装の減少に大きな影響を与えたことがわかりました。
そして、過去に多く建てられたモルタル外壁の賃貸住宅が今も多数現存していること、そして吹き付け塗装の持つ独特な意匠性が人々の印象に残りやすいことが、賃貸住宅の外壁塗装は吹き付けが多いと思われている要因と考えられます。
ローラー塗装も吹き付け塗装も、それぞれに優れた点があり、どちらが「絶対的に良い」とは断言できません。大切なのは、あなたの建物の特性、予算、そして何よりも「品質を追求する姿勢」を持った業者を選ぶことです。
外壁塗装は、単なる美観の回復だけでなく、建物の寿命を延ばし、資産価値を維持・向上させるための重要な投資です。適切な工法を選び、そして何よりも信頼できる業者と共に、後悔のない、そして将来にわたって安心できる外壁塗装を実現してください。
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